「柳瀬先生、ここです。この問題」

私は分からない問題を指差して柳瀬に見せた。


「ったく、今日は寝んなよ」

「はい」

急にキスされたときのことがフラッシュバックして落ち着かない気持ちになった。

でも冷静を装う。


「柳瀬先生、ご指導のほどよろしくお願いします」

私は頭を下げ、柳瀬の鬼のような指導を受けた。


「先生、ここも分かりません」

「……お前、これ初歩の初歩だぞ。よくこんなのも分かんないでうちの高校入れたな」

「先生、口が悪いと思います」

丸めたノートで軽く頭を叩かれた。