「……雨だ」

あれ、手に持ってるはずの傘がない。

私、傘教室に置いてきたんだ。

あっ、でもこんなこともあろうかと、確かカバンの中に折り畳み傘があったはず。


……ない。昨日使って日当たりのいいベランダに干しっぱなしだ。

家まではあと二十分は歩く。


「……教室に取りに帰ろう」

雨が強くなってきたので小さなハンドタオルを頭に乗せ、小走りで今来た道を引き返した。

息を切らしながら、なんとか二階の教室までたどり着く。

教室のすぐそばまでくると、女の人の話す声が聞こえてきた。

まだ誰か残ってるんだ。