「じゃあ麦ちゃん行こっか?」

「はい、久野先輩!」

でも、先輩といられることの嬉しさの方が勝って、柳瀬のことを考えるのは自然とやめていた。


学校から徒歩十五分のところにあるカフェは、同じ制服を着た学生で賑わっていて、席は空きそうになかった。

テスト一週間前。学生の考えることは大体同じだ。


「……久野先輩、混んでますね」

「あぁ本当だ。これは失敗だね」

苦笑いをして頭を掻く仕草。それさえも、私にとってはときめく要素の一つで、完全に恋のフィルターがかかってしまっている。