次の日、玄関のドアを開けると、いつも通りしかめっ面の柳瀬がいた。

あーあ。これが久野先輩だったらなぁ。


「おせーよ。てか、なんだその物足りなそうな顔」

私に近づき、両方のほっぺたをむぎゅっとつまんだ。


「そんな顔してませんけど」

そっけなくそう言い、柳瀬の手を振り払った。


「いつもよりブサイクに見えるぞ」

「まったく、そういうとこだよ」

久野先輩だったら、毎朝王子のような完璧な笑顔で出迎えてくれるだろうなぁ。

そして柳瀬みたいに意地悪もしないで、頭を優しく撫でてくれるだろうなぁ。

容易に想像できて笑みが溢れた。