「……あの先輩、それはどういう意味ですか?」


「あ、いいんだ、こっちの話だから。麦ちゃん、今日話せて本当によかった」

先輩の笑顔は、私の心に存在していた悩みや不安を、その瞬間忘れさせてくれた。

「……はい。私もです、久野先輩」


久野幸人先輩との出会いはこんな感じ。

王子様に出会ったみたいな感覚。


ほんの少し話しただけだった。

……でもたぶん、私の心は奪われていたんだ。