この先もずっと、キミの隣で。

「麦ちゃん、具合でも悪い?顔色悪いよ」

先輩が心配している。顔を見なくても声だけで分かる。



「……いや、そうじゃなくて」

さらに俯く私の顔を、先輩が首をかしげて心配そうに覗き込む。

でも、久野先輩の前で柳瀬の名前なんて出せない。



「今日はもう帰ろうか」

優しい声でそう言われた。


「……ごめんなさい、久野先輩。せっかく誘ってくれたのに」

「気にしないで。ほら、誰だって気分が乗らないときはあるからさ」

そう言っていつもの優しい笑顔を見せてくれ、気遣いまで完璧だ。本当に、どこまでも優しい人。



「心配だし、家まで送るよ。行こ」

先輩に手を引かれて水族館を出た。


帰り道、先輩は気を遣ってあえて何も聞いてこなかった。

今の私に、静かな空間はとてもありがたかった。


そうやって、家に着くまで二人で黙って歩いた。先輩は私の手を強く繋いで絶対に離さなかった。