「麦ちゃんお待たせ、はい」

先輩が戻ってきたことにも、目の前に差し出されたジュースにも気がつかなかった。


「麦ちゃん?」


「……あっありがとうございます」

冷たいジュースを受け取りそれを頬に当てた。私、なんだかすごく動揺してるみたい。


「麦ちゃん、どうした?」

「あっいえ、なんでもないです」

明るく振る舞ってみたけれど、上手く笑えていたかは分からない。


「もうすぐ始まるね」

「……そう、ですね」

その後見たイルカのショーだって、ただなにも考えずに眺めていただけだったから、記憶にも残ってない。


イルカのショーが終わって、先輩は館内の案内図を見ていた。