「始まるまでまだ時間あるから、俺飲み物でも買ってくるよ」

「えっそんな、だったら私が買ってきます」

「いいからいいから。座ってここで待ってて」

ほんと、できる彼氏だなあ。階段を上がる先輩の後ろ姿を見ながら、そんなことを思った。

開演時間が近づくにつれ、人が増えていく。なんとなく落ち着かなくて周りを見渡していた。


目を疑った。


「……えっ。……なんで」

数メートル前の席に柳瀬と鈴木さんがいた。楽しそうに二人で笑い合ってる。


私には、二人は恋人同士にしか見えなかった。

二人、付き合い始めたの……?


柳瀬、前に『タイプじゃない』みたいなこと言ってたのに。