「……はい」

こんな風に言ってくれた人は今までいなかった。嬉しさが胸に広がり、幸せへと変わっていく。何故か若葉の目の前がぼやけた。

「よし!ならどんな絵にするか決めるぞ」

「はい!」

楓の隣に座り、話し合いながら絵の構造を考える。そして、大きめの紙に下書きをしていく。

一緒に描いていく中で、楓は「ここをこうすればいいぞ」と厳しいながらもアドバイスをたくさんしてくれる。その時、若葉は思ったのだ。

(自分のためじゃなくて、この人のために絵を描きたい……!)



家に帰ってから、若葉は絵を描き始めた頃のことを思い返しながら絵を描いていく。すると、点と点が真っ直ぐに繋がり、輪郭もはっきりし、今までで一番いい絵が描けたのだ。

「すごい……。赤木先輩のおかげだ」

感謝を伝えるイラストを描こう、そして赤木先輩に文化祭の時に渡そう。

高鳴る胸の感情の名前はまだ知らないまま、若葉は紙にシャーペンを走らせた。