「.......文乃。降りないの?」
「え?」
止まっているバイク。私を上から見下ろす奏多。そして目の前には我が家。
「何ボーっとしてんの?よくそんなんで事故んなかったね。」
ジトーっと私を見る奏多。
「あはは、ごめん。気をつけるね。」
懐かし事思い出したな。私はバイクを降りて、あいつのように綺麗な赤を優しく撫でる。
椿のように繊細で綺麗な赤。
その光景を後ろからじっと眺めていた奏多が呟く。
「ねぇ、あんた運転上手いんだね。」
「え?」
「車の間をすいすい通り抜けるし、それに乗りなれてる。」
「それは.......こいつが私の相棒だから。こいつだから私は安心して身を預けられる」
「なにそれ。」
意味わからい。というような奏多の表情。
分からなくていい。こいつと私とあいつだけがわかること。
奏多は何故か私の顔をじっと見て、それ以上訪ねてはこなかった。
「寒いし、中に入ろっか。」
「ちょっと待って。」
まだ何かあるの?そう思い奏多の顔を見る。真剣な奏多の表情。
「まだあんたに大切な事言ってない。
ありがとう。俺を、俺たちを助けてくれてありがとう。」
「ふっ、ふふふ。」
「こっちは真剣にお礼言ってんだけど?なに笑ってるわけ?」
奏多がギロッと睨んでくる。
いや笑うつもりはなかったんだけど、ついね。
だって、奏多の顔
「お前らホントにそっくりだね。」
「は?」
「流星も同じような顔して謝ってきたよ。やっぱり仲間だね。」
怪訝そうな顔を私に向けてくる。決して私は変な事は言ってないぞ。だからそんな顔を向けないで欲しい。
「俺をあんなバカと一緒にしないで欲しい。」
