離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~

 地味だった私服やメイクも少し華やかなものにしようと色々勉強している所だ。
 しかしネット検索が中心なので、何をして良いかいまいちわからないのが悩みどころではある。
 
 暁斗は意識的に仕事の量を調整するようになった。相変わらず忙しくはあるが、そもそも他の医師や職員に任せるべき仕事は彼らに回すようにし、効率を意識した。結果、病院に詰めっぱなしになる時間が随分少なくなり、家に居る時間が増えた。

 彼の余暇が増えると同時に凛音と共に過ごす時間も増えた。

 基本的に家事は凛音が受け持っているが、休みが合えば食料品の買い出しに車を出して付いて来てくれるようになった。
 重いものを買う時など非常に助かっているが、長身の美丈夫がカートを押している姿は庶民的なスーパーの中でやけに存在感を放っていて落ち着かない。

 今日も遼介が来ている事を知らせていたので、わざと見せつけるような態度を取った暁斗だったが、あそこまでじゃなくても、彼は普段から柔らかい雰囲気で凛音に接してくれるようになった。
 
 別にベタベタする訳では無いが、最初に彼に感じていた冷たさや近寄り難さを考えたら、こうして緊張せずにふたりで食後のコーヒータイムを持てるようになるなんて、物凄い進歩だと凛音は思っている。

 ――でも、変わっていない事もある。

 凛音はコーヒーカップを口元にやりながら隣に座る暁斗の整った横顔をチラリと伺う。

 夜、相変わらず暁斗は凛音を求めふたりは肌を合わせる。しかしやはり朝目覚めた時に凛音のとなりに彼がいた事は無い。凛音はいまだに夫の寝顔を見た事すら無いのだ。