離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~

「わ、ありがとうございます!遼介、頂こうか?コーヒーいれるわよ」
「あのプリン……姉さんの好物」
 
 姉の言葉には答えず、遼介が何やら小さな声でボソボソと言っている。

「遼介?」
「え?あ、いや俺、明日朝早いからもう帰るよ。ポリクリの予習もしておきたいし」

 そう言うと遼介はダイニングチェアから立ち上がり、素早くリュックを肩に掛けた。

「えー、そうなの?もっとゆっくりしていけばいいのに」

 途端に凛音が残念そうな顔になる。弟がもう帰ってしまうのが単純に寂しいのだ。

「ごめん。また姉さんに会いに来るよ」
「わかった……車に気を付けて帰るのよ」
「うん、大丈夫だから。帰ったら連絡する」

 凛音はつい小学生に言い聞かせるような言葉を掛けてしまう。これは昔から、――特に4年前から頻繁にしている姉弟のやり取りだ。

「またいつでも来たらいい」

 そのやりとりを黙って見ていた暁斗に声を掛けられると、遼介はじっと義兄の顔を見る。

「――お邪魔しました。姉さん、また」

 そう言うと遼介は帰って行った。