離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~

 たぶん使っているお肉が上等だからだと思うが、言わないでおこうと凛音は苦笑する。

(遼介と二人暮らししていた時は節約の為に豚ひき肉のハンバーグだったからなぁ。あれはあれで美味しいんだけど)

「腕が上がったって言われると嬉しいわ。でも寮の食事も美味しいでしょ?」
「まあまあかな。俺は姉さんの飯の方が好きだけど」
「ふふ、ありがとう。でも寮の食事の方が栄養バランスはも安心だわ」
 
 凛音は可愛い弟の言葉に目を細めた。
 
 9月に入り、金木犀の香りが夏の終わりを告げる季節。暁斗と契約結婚をしてから3ヶ月ほど経っていた。

 暁斗は約束通り遼介の学費や生活費すべてを支払ってくれていて、遼介は医師を目指して順調な大学生活を送っている。

 凛音の結婚を機に遼介は姉と住んでいたアパートを引き払い、学生寮に入った。以前暁斗が言っていたように彼が取り計らってくれた。
 食事付きかつプライベートも確保出来る山海大学医学部の学生寮は人気が高く、年度途中から入寮することは難しいらしいのだが、たまたま空きが出たらしく運良く入寮することが出来た。

 凛音が遼介の気持ちいい食べっぷりを見守りながらお茶を飲んでいると、あっという間に遼介は食事を全て平らげてしまった。

「美味しかった、ご馳走様!……で、今日は剣持先生は?