『アッキーはあんまり周りに仕事を振らないからねぇ。それもどうかと思うけどねー』

 福原によると、暁斗は人に任せるべき仕事も自分でしてしまうし、何でも完璧にしようとする。そして出来てしまうのだ。

 そうは言っても彼は働きすぎだと凛音は思っていた。一緒に生活をしていると、どうしても彼の身体が心配になる。

 余計な事は言わないようにしようと思いつつ、我慢できずに、昨夜久しぶりに夕食を一緒に食べた暁斗に言ってみた。意を決して『少しは仕事をセーブしたらどうでしょう』と。

 しかし、帰って来たのは『自分の好きでやっているし、元々体力はあるから問題ない。君には迷惑を掛けていないはずだ』という実にアッサリバッサリとした答えだった。

(それはそうだし、『体力』があるのもわかってるけど……ていうか、ああゆうことをする時間があったら睡眠を取った方が良いと思う!)

 着替えを終え更衣室を出た凛音は、昨夜の事を思い出して一人頬を赤くする。

 あの『初夜』後の朝、目覚めると凛音は自分の部屋のベッドでひとりで寝ていた。

 パジャマをキッチリ着ていて、身体もさっぱりしていたので一瞬、昨夜の事は夢だったのかと思ったが、身体に残る感覚、なにより鮮明な記憶が夫に抱かれた事は間違い無いことを知らせていた。
 
 きっと気を失うように寝てしまった凛音を暁斗が運んでくれたのだろう。