ふたりの為に用意された控室で、ウェディングドレスに身を包んだ妻を暁斗は気遣う。

「はい。今日は暖かくて良かったです」

 凛音は控室の椅子にゆったりと腰掛けている。
 妊娠5ヶ月。安定期に入り、少しだけお腹がふっくらしてきた。

 ドレスはお腹を圧迫しないように胸の下で切り替えがされているエンパイアデザインで、サテンオーガンジーの滑らかな生地が足元まで柔らかく広がっているものだ。

「それにしても、暁斗さん素敵ですね……」

 凛音は暁斗を見上げるとはぁーと感嘆の溜息を付く。暁斗はシンプルなブラックタキシードスタイルだ。

「そうか?別に俺は何でも良かったからこうなったんだか」
「こういう定番のものこそ、着る人によって引き立つんですよ。背が高くてがっしりしている暁斗さんが着ると本当に、もうかっこいいです」

 凛音は手放しで褒めてくれる。愛する妻に褒められるのは嫌な気はしない。

「君こそ最高に綺麗だ。そのドレスも君の優しい雰囲気にとても合っている」

「あ、ありがとうございます。なんだか夢みたいです。こんな素敵なドレスを着れるなんて」

 凛音は恥ずかしそうに、でも幸せそうに笑っている。

 妊娠し、母となる準備をしている彼女は前にも増して内側から輝いている。暁斗はそんな妻を眩しく思う。