「でも本当は、単純に俺が君の美しいウェディングドレス姿を見たい」
「もう、どうしたんですか?暁斗さん今日はなんだか……甘い、です」

 彼の膝の上に乗せられ、抱きしめられている状態で凛音は自分の頬が熱くなるのを感じた。

「言っただろう、これからは思っていることを言うって。慣れろ」

 言いながら彼は凛音の髪にキスを繰り返す。

 明るいリビングのソファでこの状況は居たたまれないと思った凛音は話題を変えようと試みる。

「えーあの、暁斗さん、言いたいことを言っていいんでしたよね?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、出来ればお風呂掃除とか、家の事もっとやりたいし、外出もしたいし、夜食を届けるのは無理にしても昼食くらいは作りたいです」

 元々じっとしているのは性に合わない。最近はいい加減気づまりになりつつある。体調も良くなってきたし、普通に主婦生活を送らせて欲しいと凛音は思っていた。

「……」

 背後の暁斗の動きが止まった。黙っている。
 すぐに答えが返ってこないと言う事は……もう一押しでは無いかと妻の勘が働いた。

「絶対無理をしないようにします!私も動いていた方が気分が良いし、何より暁斗さんの為にいろいろしたいんです……だめ、ですか?」

 我ながら露骨だと恥ずかしさに内心悶えながら、凛音は甘えるように暁斗の肩口に頬を寄せる。

 そして、それは効果てきめんだったらしい。

「……俺が、君を心配するあまり、過保護になっている自覚はある」

 クール改め、激愛の過ぎる夫との交渉が初めて上手く行った瞬間だった。