雨降り王子は、触りたい。




市川の声に、ようやくブレーキがかかった。

私、なに焦ってるんだろ。

……もしかすると、いっぱいいっぱいだったのかもしれない。

1人で抱えるには大きすぎる出来事に、大きくなりすぎた三咲への気持ち。

もう心に余白はなくて。

話し始めると栓が抜けたように、こぼれ落ちていく。



「三咲、萌絵ちゃんとのこと好きだったって。キスされたって、萌絵ちゃんが言ってた。自分しか体質なおせないって────」



口にすると、胸が張り裂けそうになった。

はしゃぐ学生ばかりの店内。
私たちの周りだけに漂う、重々しい空気。

ぎゅ、と。
力を緩めたら涙が出そうで、口を紡ぐ。



────しかし。



「……知ってたよ、留衣が萌絵にフラれたこと。キス、したこと」



市川の声がして、結んでいた唇はあっさりとほどけた。