雨降り王子は、触りたい。




「痛いなぁ…」



はやく…逃げないと。

そう思うものの、足が震えて思ったように動かない。

こんな男に怯えていることが、悔しい…。

私が睨み返すと、男はニッと口角を上げた。



「いいねぇ、その目」



そして再び手首を掴まれ、その反動で持っていた裁縫道具箱が手から離れてしまう。



ガンッ────

大きな音が虚しく響く。

地面に落ちた裁縫道具箱は、跳ね上がって。
階段から落ちる寸前の所で止まった。

結構な音量で響いた音も、きっと誰の耳にも届いていない。



……何やってんの、私。

物に釣られて、こんなことになって。
ほんとバカ……。

袋の中の快晴レッドの笑顔が、私に呆れて笑っているかのように思えてくる。