雨降り王子は、触りたい。




ど、どういうこと……



瞬きするのを忘れていた私が、ようやくパチパチと繰り返した、その時。



─────バッ

すごい勢いで、私の手からメガネが奪い取られた。



「…誰にも言うなよ」



そして今にも消えてしまいそうな声が聞こえたかと思うと。

あっという間に走り去り、小さくなった三咲の背中が闇の中に消えていった。



それはそれは、本当に一瞬の出来事だった。



一体…なんだったの………?

しゅるしゅる…と、穴の空いた風船のように力が抜けた私は、そのままペタンと、地面に座り込んだ。