校門の前。ぐんと腕を伸ばし、青空に手をかざすと、真っ赤にコーティングされた爪がキラキラと輝いた。


…うん。マニキュア塗って、大正解。


私は光を跳ね返す指先を、満足した表情で眺める。


雨宮 絃(あまみや いと)、高校1年生。好きな色、赤。
私の身の回りは赤で埋め尽くされている。


例えばカバンの中身は。
赤い筆箱に赤いノート、赤いポーチに赤いお弁当箱、赤いスマホケース。

私服も赤いパーカーとかTシャツとかよく着るし、最近部屋のカーテンも北欧柄の赤いものに変えてもらった。


赤は何もない私に色を付けてくれる、特別な色なんだ。