雨降り王子は、触りたい。




「合コンとか論外だわ。連絡なんて一生返さない。」



のえるが、ドスの利いた低い声でそう言った。

普段くりっと丸いはずののえるの目は、キッと釣り上がって。

小さな手が握りしめるココアのパックは、ミシミシと音を立て形を変えてしまっている。



「俺約束とか破れないんだよ〜!」

「行こっ和佳、絃」



杉山の情けない雄叫びを無視して歩き始めたのえるを、私と和佳は慌てて追いかけた。







ミーンミンミンミン…

窓の奥から聞こえるセミの鳴き声は、暑苦しさを増長させる。

教室へ戻ると真っ先にサイダーに口をつけたけれど、それはやっぱりぬるくなっていた。

黒板の横では時計の針がチクタクと音を立てて進んでいて、授業開始が近づいている。