「そういや留衣、辞書持ってたよ。呼んであげる。」
市川が、言った。
「や、それは…」
私はしどろもどろになりながらも口を開く。
しかしそれは、一足遅かったようで。
市川はもうすでにこちらに背を向けて、音量を上げて三咲に声をかけた。
「留衣ー、辞書持ってる?」
あちゃー…
私は眉を下げる。
もちろん、三咲に借りるのが嫌ってわけじゃない。
だけど少し、気が重いというか。
こちらを向いた三咲は、市川の隣にいる私たちを見て察したようで、鞄をゴソゴソと探り始めた。
…いつも憎まれ口ばかり叩くくせに、あっさり貸してくれるんだ。
