冷めない熱で溶かして、それから。



「松野くんのクラスは準備とかないの?」

「ありますよ、大変です。いろいろ面倒くさくなって逃げてきました」

「えっ、それで帰ろうとしてたの?」

「準備は苦じゃないんですけど、とにかく周りがうるさくて……耳障りです」


 そ、そこまで……?
 周りに慕われてるってことじゃないかな。

 それってすごいことなのに。
 人気者の証だ。


「頼りにされてるってことだよ!」

「違いますよ。ただサボってる奴らに話しかけられてるだけです」


 はあ、とため息を吐く松野くんは心なしか疲れている気がする。

 それにしても……。


「意外、だなぁ」
「意外?なにがですか?」


 あっ……つい、ポツリと心の声がもれてしまっていた。
 その声は松野くんにも拾われてしまい、聞き返された。