「事実ですよ。今は満足してます」

 上機嫌な松野くんは、嬉しそうな感情が溢れていた。
 ついかわいいと思ってしまうけれど、心を許してはいけないと気を引き締める。


 私は怒っているのに、松野くんは終始上機嫌のまま家に到着した。


「送ってくれてありがとう……」

 最後まで怒っているような口調になってしまったけれど、わざわざ家まで送ってくれたことに対してはお礼を言う。

 松野くんはそんな私を見て目を丸くしたかと思えば、ふっと優しく微笑んだ。


「俺が勝手にしたことなんで気にしないでください」

 スッと、松野くんの手が伸びてきたかと思うと、頭にポンと手が置かれた。


「な、なんでしょうか……‼︎」

 昨日の一件で警戒心を抱いた私は、すぐさまその手から離れる。


「……いや、拗ねてる先輩がかわいいなって」
「なっ……!」


 拗ねてる⁉︎
 私は怒ってるのに‼︎

 子供扱いされているようで不服だった。