「……ふっ、今はしませんよ。するならふたりのときに、ね?」


 色っぽい笑みを向けられ、鼓動が速まり頬が熱くなる。
 私ばかりが松野くんに振り回されている気がする。

 確かに後輩だからといって侮ってはいけない。
 松野くんは立派な男の人だ、油断していると本当に噛みつかれてしまいそうだ。


「ぜったいに松野くんとはふたりきりにならない……」
「そうだ、今からホテルにでも行きませんか?」

「行きません!そんな大胆に誘わないで!」


 なんかすごく軽い……!
 ここまで軽いといっそ清々しいくらいだ。


「まあ今は先輩とこうして一緒にいられて満足してるんで、良いんですけどね」

「そんな言葉に惑わされないからね」


 少し前の松野くんに言われていたら捉え方が違っていたかもしれないけれど、今は下心があるようにしか思えない。