冷めない熱で溶かして、それから。



 やっぱりなにか裏があるのでは……なんて、また悪いほうへと考えてしまう。

 けれどもし裏があったとしても、今ならまだ引き返せる。


 これからも今のように、ただの先輩後輩という関係を崩さなければいいだけの話。


 それに松野くんも女の人が苦手そうだったし、ただ話し相手が欲しかっただけだろうと思ってみる。



「松野くん、もうすぐ着くよ」

 降りる駅が近づいてきた。
 松野くんは私の手を握ったまま、起きる様子がない。

 そろそろ起こそうと思って声をかけるけれど、言葉だけでは反応してくれない。


「松野くん、起きて」
「……ん」

 ゆっくりと目を開けた松野くんは、一瞬不機嫌そうに眉間にシワを寄せた。

 思わず身構えてしまったけれど、私を見るなり松野くんの表情が和らいだ。


「あっ、もう駅に着きますか?」

 声が少し掠れている。
 私は松野くんの質問に頷いた。