冷めない熱で溶かして、それから。



 どうしよう、つい目を逸らしてしまった……!

 このまま勢いで通り過ぎようと思い、少し歩くスピードを早め、その集団の横を通った。


 ふう……良かった。

 さっき、松野くんといた人たちからの視線は感じられなかったし、目立たず横切れたと信じたい。


 松野くん、女の人たちに人気だったな。
 きっとクラスの中心にいるタイプなのだろう。

 私とは違うタイプの人だ。
 クラスの中心だなんて、考えただけで緊張してしまう。


「……先輩」

 松野くんのことを考えていただろうか。
 いま、松野くんの声が聞こえた気がする。

 まだ二回した話したことがないのに、幻聴まで聞こえるようになるなんてなにごとだ。


「神崎先輩」
「……」


 うん?
 やっぱりすごく近くで松野くんの声がする……ような。

 ゆっくり振り返ると、そこには私を見下ろす松野くんの姿があった。