冷めない熱で溶かして、それから。



 うう……いまからあの集団の横を通るなんて、少し気が重い。

 目をつけられないように、息を殺して横を通り過ぎようと思った。


「凪、聞いてる?」

「たかちゃんたちも来るって言ってるんだよ。なおさら凪くんも来るべきだよね?」


 凪……?

 ついその名前に反応してしまい、顔をあげる。


 駅前で固まっていたのは男女の集団で、その中でも存在感のある人物がいた。

 集団の中で一番背が高くて、その顔がはっきりと確認できた。


 松野くんだ、と。


「まあまあ、たまには凪だって早く家に帰りたいんだよ。な?」

「だからさっきからそう言って……」


 私の視線に気づいたのだろうか。
 松野くんがふと顔をあげ、私と目が合ってしまう。

 しまったと思った私は、すぐに俯いた。