「……松野」
「えっ?」
「名前、松野凪って言います。呼び方は何でも大丈夫なんで」
私が悩んでいることに気が付いたのだろう、彼が自分の名前を教えてくれた。
何でも大丈夫と言われたけれど、フルネームを教えてくれたってことはきっと、苗字呼びをするのが正解だろう。
「……うん、ありがとう。津田くんも松野くんも本当に気にしないで大丈夫だから!じゃあ私はこれで……!」
一度頭を下げたあと、私は璃花子ちゃんに目配せしてその場を立ち去った。
「え、あの後輩が芽依に暴言を吐いた男だったの⁉︎教えてくれたらキツく言ったのに!」
「そこまでしなくて大丈夫だよ!それにもう悪い人じゃないってわかったし……」
「でも芽依を同級生だと思うなんて失礼じゃない?いくら顔が良くても……うん、まあ顔は良かったね?先輩と勘違いするだけあって、どっちもイケメンだったというか……」
璃花子ちゃんは怒りを鎮め、いつしかふたりがかっこよかったという感想を述べていた。



