「やめっ……」
「嬉しいだろ?メイちゃんが好きな俺とヤレて」
壁に体が押し付けられる。
周りに人はいない。
助けを呼びたくても上手く声が出せない。
怖い、誰か……松野くん──
「先輩!」
廊下に声が響く。
私の好きな人の、焦りが含まれた声。
「おい!何してんだよ‼︎」
「……チッ」
今井先輩は人に見つかったとわかるなり、私から離れる。
「いま、お楽しみ中なのわからない?」
いっそ清々しいほど、自分が悪くないと主張する先輩。私と同意の上だったと言い張るつもりだろう。
こんな人だって、どうしてあの頃の私は気づかなかったの……?
どうして私は……。
「ふざけんなよ!嫌がってんだろ⁉︎」
ふわっと、何かに包まれる。
気づけば私は松野くんの腕の中にいた。
温かい……。
松野くんは本気で怒ってくれていた。



