「やっぱり芽依ちゃんだよね、久しぶりだなぁ」
柔らかな声。
好きだったはずの優しい声音が、いまは怖い。
「……あ」
足音が近づく。
ゆっくりと振り返ると、そこには先輩の姿があった。
弄ばれていることに気づかず、恋をしていた相手──今井先輩が目の前にいる。
「芽依ちゃんがここの高校にいるって知って、もしかしたら会えるかなって期待してたんだ」
先輩が一歩、また一歩と私に近づく。
あの日、弄ばれていたと知って以来、先輩とはほとんどまともに会話をしていない。
私が先輩を避けて、自然と関係は消滅した。
「会いたかったよ、ずっと。芽依ちゃんに避けられるようになってからも、君を忘れたことはない」
うそ、ぜんぶ知っている。
今井先輩ひ甘い言葉で人の心を操って、遊ぶような悪い人。
もう二度と騙されない。
いまはその笑顔が黒く見えて仕方がなかった。



