あの日以来、松野くんは私と一定の距離を保つよう注意していた。
 具体的に言えば、私に触れてこようとしなかった。

 きっと、これが良い距離感なのだろう。
 けれど物足りなさを感じるのは、松野くんと近づきすぎたから……?


 短いような長いような、何とも言えない時間だけが流れていき、気づけば文化祭当日になっていた。

 私たちのクラスは個性あふれるカフェのおかげか、開始早々大盛況だった。


 待ち時間があるほどで、頑張って準備した甲斐があったなと思う。


「見ろよあの子、かわいくね?」
「着させられてます感が強いな」


 うっ……その言葉聞こえてますよ、お客さん。
 かわいいと言われるのは今日だけで何回だろう。