「気にしないで……それに、今は誰もいないから」

 ね?と言って松野くんを慰める。
 あまりにも落ち込んでいるため、そう声をかけずにはいられない。


「ありがとうございます」

 松野くんはお礼を言うと、おとなしく私についてきた。
 けれど松野くんは、いつもより私と距離をとっている。

 触れないように、刺激しないようにと気を付けているのがわかった。


 昨日、泣いちゃったからな……。
 今更ながら恥ずかしい。過去を引きずって泣くなんて。


「……先輩。俺の話、聞いてくれますか?」
「……うん」

 ここまでされて、今さら逃げられないし逃げようとは思わなかった。