もしかして私、このまま──


『ああいう男を知らない純粋そうな女って扱いやすいよな』

 思い出すのは、先輩の人を見下すような口調に楽しそうな声。

 あの会話を聞くまでは、先輩も松野くんのように全てが優しい人だと思っていた。


 気がつけば、熱は完全に冷めきっていた。
 代わりに涙が頬を伝う。

 松野くんも……?
 もし松野くんもそうだったら、今度こそ何も信じられなくなる。


 それがたまらなく嫌で──


「……せんぱ」

 松野くんがハッとしたような顔を浮かべたけれど、そんなのお構いなしに私は彼を押しのけた。


「……お願いだから私で遊ばないで」

 松野くんは口を開こうとしていたけれど、何も聞きたくなかった私は、逃げるようにしてその場を後にした。