「よし、走るぞ!」
「え、えー!」
太陽は私の腕を引っ張るとバイクの間をぬって器用に走る。
何が起こったかわからず、パニックになっている私は考えるのをやめて足を動かした。
だけど頭だけはやけに冷静で。怖くて怖くて仕方ない。心臓も走っているせいかバクバクと騒がしく、冷や汗が流れる。
………何か嫌なことを思い出しそうで怖い。
目の前に太陽がいるのに、怖くて怖くて……。
「いや、いやっ!太陽、助けて!」
その瞬間、頭の中で何かがフラッシュバックして恐怖に支配される。走っているにも関わらず、大声を出して、太陽に助けを求める。
怖い……怖い、怖い!
何が怖いのかわからないけど何かから逃げるのが怖い。暴走族は関係なしに。
「はぁ、はぁ……っ、太陽!」
「愛華、大丈夫。大丈夫だから。落ち着け。今、和人達が向かってくれてる」
いつの間にかスマホを耳にあてて、誰かに電話していた。



