撫でる度に私の三つ編みは左右に揺れて、首に触れる。
ふふ、くすぐったい。
でも、もっと撫でて欲しい。
「愛華、アイツは大丈夫だったか?」
太陽の存在に安心しきっていると、今、思い出したくない、五十嵐くんのことを聞いてきた。
アイツ、と言われて肩がビクッとはねる。
あ、やばい。反応しちゃった。太陽には知られたくなかったから自分から話すのはやめようと思っていたのに、こんなに早く太陽に聞かれると思わなかった。
「まさか、なんかされたのか?」
人気のない放課後の昇降口。その昇降口に太陽の低く、ドスの効いた声が響く。
私はどう言ったらいいかわからず、黙った。
五十嵐くんに……キスされたなんて。口が裂けても言えないよ。
太陽に、迷惑をかけたくない。
「なぁ、何されたんだ?」
黙っているせいか何かされたと確信したような口ぶりに冷や汗がたらり、と背中を流れた。



