そして、その日は突然訪れた。


「南ー、お客さん」


3時間目の休み時間、俺と南とはるかちゃんはいつものように席に座ったまま
くだらないおしゃべりをしていた。その声に南だけでなく俺たちも一緒に振り
向くと、そこには見慣れない女の子が2人。俺が見慣れてないんだから3年じゃ
ない。


「どうせまた『坂本さんに渡して下さい!』とかだろ」


ちょっと行ってくる、といって席を立つ南をはるかちゃんは大変だね、と
いって見送る。確かに南は俺宛の手紙やプレゼントの橋渡し役になることが
何度かあって、今回もみんなそれだと思っていた。
ところがしばらくして教室に戻ってきた南は明らかに挙動不審で、教室の
入口でまず中途半端に開いた扉にぶつかり、その後も何度も机にぶつかり
ながらやっと自分の席にたどりついた。


「...どうしたの?」


「いや、なんでもない。なんでもないんだ」


「...もしかして、告白されちゃった?南クン」


この俺の一言に南は見事に硬直。そんな南を見てはるかちゃんも目を丸く
した。それっきりしばらく黙ったままだったはるかちゃんは、4時間目の
始業のチャイムがなってまもなく席を立った。


「...ちょっと頭が痛いので、保健室に行ってきます」


なんで敬語なのかはさておき、はるかちゃんは南が後輩に告白されたことに
大きなダメージを受けた模様。
そして南は硬直しつつもはるかちゃんに『大丈夫か?』なんて声を掛けている
ところを見ると、まず間違いなくはるかちゃんの様子が変なのは自分のせい
だなんて気付いていないんだろうなあ。



ある意味幸せだけど、どうしようもなく鈍感だ。