敏恵は車を飛ばし、予定より早く着いた。すると間もなく濱見崎と合流することができた。もう昼近くになっていて、三人で喋りながら、バーベキューの準備をした。濱見崎はキャンプ場は初めてだけれど、自宅の庭でならよくバーベキューをするんだ、と言っててきぱきと材料を切っていった。その手際のよさに敏恵がいつも以上に目をハートにした。夏美はご飯担当になり、飯ごうでご飯を炊いた。
 バーベキューは夏美の想像以上に盛り上がり、料理もうまく仕上がっていた。キャンプなら任せて、という敏恵がキャンプ料理ならではの技を効かせたので抜群の美味しさだった。敏恵は濱見崎の手前、最初は、おしとやかにしていたのだが、料理を食べてほぐれてくるといつものマシンガントークが始まった。濱見崎は、最初は戸惑っていたものの、段々気分があがってきたようで、打てば響く敏恵を面白がっているようだった。
 賑やかに喋っている二人を眺めながら夏美は「いい雰囲気…」と、ほっとしていた。二人がうまくいってくれれば、隆に嘘をついた甲斐もあった、というものだ。
 スキレットを使って、ふわふわのパンケーキを作り、それを食べながら三人でまったりと過ごした。濱見崎はタイトスケジュールをこなした後で疲れもあったらしく、うとうとと昼寝をしだした。横で敏恵がうっとりと寝顔を見ていた。
 状況が変わったのは、帰り支度をしだした夕方からだった。急に空が暗くなり、突然、土砂降りの雨となった。大慌てで片付けて車に乗り込もうとする。
 すると、キャンプ場の管理人が駆け寄ってきた。
「これから車で帰るのはおすすめできません。崩れやすい道があって、雨が降っている間は、様子をみた方がいいですよ」
「様子をみるって言ったって…」
 濱見崎が言いよどむと、管理人はこのキャンプ場にあるコテージが空いていると言ってきた。雨はなかなかやみそうにない。三人で話しあった結果、そのコテージに泊まることになった。
 すっかり雨に濡れてしまったので、各々がシャワーを浴び、夕食を食べたりしていたら、もう九時近くになっていた。
 コテージのリビングで、濱見崎と敏恵がコーヒーを飲んでいる。ちょうどその時、夏美のスマホが鳴った。隆からだ。
 夏美は、慌てて、コテージの廊下に出て通話をオンにした。
「夏美ちゃん。キャンプどうだった?」
「あ、ええっとね」