こんな嬉しがらせを言ってくれるので、隆は自分のことをちゃんと好いていてくれるんだなあ、と安心することができる。
「夏美ちゃん、嫌いな食べ物って何?今度の週末は僕が色々持ってこようと思っているんだけど」
「あまり好き嫌いはなくて…なんでもありがたくいただきます」
「本当?そうか、腕が鳴るなあ。とびきりの晩御飯にするから、期待しててね」
「嬉しい。楽しみ…」
 ほわほわと週末の楽しみが膨らんでいく。気持が盛り上がったところで、ふとあずさの言葉がよみがえった。最初が肝心と、自分に言ってきかせて声を改める。
「あの、隆さん」
「はい?」
「やっぱり、隆さんがどんな仕事やってるのか、早く知りたいです。隆さんの働きぶりだって詳しくきいてみたいし」
「うん?えーと。そうだなあ…夏美ちゃん、今やってるイラスト、いつ仕上がりそう?」
「これですか?そうですね…来週末くらい」
「じゃ、仕上がったら、次は今まで描いた絵を出版社に持ち込めばいい。リリス出版って、知ってるでしょ?」
 知ってます、と言いながら夏美は、はぐらかされた、と頬をふくらませた。

 週末。隆はちゃんと約束の時間に来てくれた。大きな紙袋を持っていて、そこから出てきたのは高級中華料理店のテイクアウトだった。できあがったばかりのものを詰めてもらったらしく、どれもまだほかほかと温かだった。
 夏美は食器棚にあったお皿を総動員して、容器から移しかえた。もっと熱々の方がいい、と思ったものだけレンジで温めなおす。
 テーブルは皿でぎっしりになり、夏美は好物のエビシュウマイをうきうきして口に運んだ。
「隆さん、おいひいれす…!」
 シュウマイがあつあつで、口がまわらなくなる。隆は顔をくしゃくしゃにして笑った。
「食べっぷりがよくて嬉しいよ。たくさんあるからね、ゆっくりお食べ」
「はひっ」
 お酒くらいは、と夏美が冷蔵庫にビールを冷やしておいたのも、功を奏した。
「鉄板すぎるほど、鉄板だけど。やっぱりいいね。餃子にビール」
「最高です…!」
 こんなに、幸せでいいのかな、という晩餐が終わり、夏美のこれまでに描いた絵を隆に見てもらうことになった。
 ファイルしているものもあれば、パネルに描いたものもある。結構な量だったけれど、隆は一枚一枚、丁寧に見ていった。