(短編)キスだけで我慢できるなら。


「中谷さんは可愛いし、僕じゃなくても青春を謳歌できますよ」


「はあ?わけわかんない」


「同じ年頃の男子と付き合う方が楽しいと思いますよ」


「……」


なによ、こんなふうに距離を詰めてきて。


私を振るつもりだから、最後だから?


「先生はズルい大人だから、いざという時、逃げてしまうかもしれませんよ」


「そんなの……」


「先生をあまり信用しない方がいいです」 


「いいもん、どうなっても怖くない」


先生はまた小さなため息をつく。
今日はもう何回目だろう。


困らせているのはわかってるんだ。


だけど、どうしても諦められないの。


消そうと思ってもこの思いは消えてくれないから。


「中谷さんが傷つくのは見たくないです」


先生の寂しそうな声が胸に刺さる。