(短編)キスだけで我慢できるなら。


「中谷さんはそういう迂闊なところがありますよね、これからは気をつけてください」


「いちいちお説教しないで」


ぷうっと頬を膨らませた。


そしたらクスッと鼻で笑われた。


「裸と言っても下着が少し見えただけですし」


「でも、恥ずかしかったんだからね」


「それでもそのことで、先生を脅すのはいけないことですよ」


「だってそうでもしないと……」


脅さなかったら、私と付き合ってなんてくれなかったでしょ?
いつのまにか先生が目の前に来ていて、私の座っている前で、床に片方の膝をついてこちらを真っ直ぐに見上げている。


かなり近いからドキッとした。


先生の端正な顔をこんなにはっきりとみたのは初めて。


本当に綺麗な瞳をしてる。


「見つめ合うだけで、真っ赤になっていますね」


からかうような言い方。


先生は案外、意地悪だ。