【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない

『好き』と言おうとした瞬間、昴は依乃里の唇を人差し指で押さえた。





そしてゆっくり指を離して昴はその理由を話し始めた。





「榛名ちゃんの気持ちは嬉しいよ。けどね、好きと言うのは簡単だけど、人を好きになるって難しいことなんだよ」






その言葉の意味は依乃里には理解出来なかった。ただ一つだけ分かったのは依乃里が昴に振られたということ。





あ……。私、振られちゃったんだ………。





「今日はもう帰るね」






「先輩...!」





こんな半端な状態で私を置いていかないで…!!






「俺今日、委員会なんだ。ごめんね」






言葉では言わないが、明らかにこれ以上は踏み込むなと言っているように聞こえた。






今まで見たことない昴の苦しげな表情。






昴が部屋を去ったあと、依乃里の目からは涙が頬をつたっていた。






昴先輩の考えていることが分からない。






私の“好き”は昴先輩にとって迷惑だったのかな?






私に優しかったのは父親通しの関係を保ちたかっただけなのかも。





だったら、初めから話かけなきゃよかった………。