【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない

「捕まって」




これ以上体調を悪化させないために昴は依乃里をおぶって部屋まで連れていく。





先輩に近づけて嬉しいはずなのに、少し悲しい。もっとドラマチックな雰囲気でこうされたかったな。







部屋について依乃里をベットに座らせ、身体が冷えないように布団を膝にかける。





「ありがとうございます」






「どういたしまして。今お茶入れてくるから待っててね」






依乃里の頭を優しく手を置いてから昴は台所がある一階へと戻って行った。






まさか来てくれるなんて思ってもみなかった。何時までいるのかな?





このまま泊まったり…あるわけないか。私がそう言ったら本当に泊まってくれたりして。





なーんて。そんなわけないか!






「何を考えているの?」






「キャ!な、何でもないです」





私の妄想漏れてた!?いや、これは単に偶然かもしれない。それにしてもびっくりした〜。





先輩タイミング良すぎ。





「えぇ、気になるな。クレープ食べながら聞くことにするか」






絶対に話すもんかと思っていたけど、昴がアイスクレープが入っている箱を開けると依乃里はすっかり誘惑に負けてしまった。






「わぁ...!美味しそう。いただきます」








「召し上がれ」






モチモチの生地にひんやりとしたバニラアイス。イチゴとチョコソースがかかっていてまさに夢のスイーツ。





さすが昴先輩。私の好きな食べ物がよく分かっている。





「喜んでもらえてよかった」





はっ…!つい、負けてしまった。いやでも、だからといって話しませんからね。






この妄想は私だけのヒミツの世界なんだから。





「ほんと美味しいです。やっぱり冬でもアイスクレープは最高...!何個でもいけちゃいます」