【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない

『先輩は依乃里のこと好きなのか?』





突然、八雲の言葉を思い出した。






今は思い出したくないんだ。このまま二人の時間を過ごしたい。






だけどこの時、俺は二人の噂が真実か確認したくなった。






「彼とはどう?」





何をイライラしてる。今目の前にいるのは榛名ちゃんじゃないか。東八雲ではない。





「彼?八雲くんのことですか?」






名前で呼んでいるんだ。俺はまだキミに名前で呼ばれたことがないのにアイツは...。






「うん。付き合っているみたいな噂聞いたけど、本当なの…?」






もうなんか何を言われても自分を保てる自身が無くなってきた。






「それは誤解です。私は八雲くんとは付き合ってません」






『なら俺が依乃里を彼女にしてもいいんすか?』






まただ。ほっとした瞬間にアイツの言葉が頭を横切る。イライラする。






「そう。でも最近彼と一緒にいるよね?」






いつも隣にいたのは俺なのに。





……俺が離れた結果がこれか。







「あ、あれは八雲くんが勝手に私のそばにいるだけで。別に深い意味はありません」







嫌だな。こんな気持ちになるの。最初から手放さなきゃよかったんだ。






「・・・・」




苦しくて辛くて…彼女のことが好きだからこそ現れる感情なんだ。




彼女も俺のこと想っている時はいつもこんな気持ちになっていたのだろうか。






出会った時からずっと笑顔で俺と接してくれた彼女は一体どんな気持ちで俺といてくれたのか。







「先輩?」





「あ...ごめん。...ちょっと待ってて。これ片付けてくるから話はその後に」






そろそろ完全下校時間だ。ここの廊下は生徒がよく使う。鉢合わせたらまた気まづくなるだろう。







会えたのなら帰り道でだって話せる。