【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない

「確かにその方が話しやすかったよ。ねぇ、あの質問の答えは八雲くんの意思だよね?」





答えまで作ったものだったら悲しい。ネット上で活躍している人の言葉は影響力が強いもの。





それが人気ものなら尚更、言葉には注意しなければいけない。





「質問の答えはちゃんと俺の意思だ。人の立場になって悩みを聞いて解決に近づくようにしたい。それは絶対に変わらない俺の願いだ」





「どうしてそこまで…」





人の悩みは人の数よりも多くて複雑。




それを赤の他人である八雲くんが自ら相談に乗って解決策まで考えるなんて普通の人にはとても真似出来ないこと。






「人は悩みを抱え込んで、人に話さないとその内人間は自分の意見だけに支配される。俺は知ってる」




そこにどれだけ強い思いがあるか。依乃里は答えを聞くまでじっと考えた。





「それって誰?」





「俺の母親だ」





八雲くんお母さんが…。





「母さんさ、昔から悩みを溜め込む人だったんだ。いつも笑顔だったけど、裏ではいつも悩んだ顔をしていた。母さんは聞き上手でいつも他人の話しを真剣に聞いていた。






聞くだけで自分の悩みを打ち明けない姿を見ていられなくて…。





ある時悩みを聞くって言ったら母さん笑顔で俺に話してくれた。話したあとはいつもより穏やかだったんだ。




それがきっかけで他に悩みを話せない人のために俺が聞き役になろうって思ったんだ。やっていること母さんと同じだけどな」