・LOVER—いつもあなたの腕の中—

　私に感心している副社長は、腕組をして頷いていて。ひとりパ二くっている私を眺め、余裕の笑みを浮かべている。
　そんな副社長の姿と、いつかの西田さんの姿が似ていて。二人が兄弟だと聞いてしまったからなのか、目の前に立っている副社長が、西田さんに見えてきてしまう。


「西田リュウの本名は吉野裕隆（よしのひろたか）。アイツは双子の弟」

「双……子」


　絶賛大混乱中の私は額に右手を当て考え込む。頭の中を整理せずにはいられない。


　えっと。それじゃあ、俳優をしている西田さんのお兄さんが副社長で。副社長は次期社長だから、そうなると西田さんは次期社長の弟であり。西田さんは社長の御子息、ということだ。
　私が惹かれた人は、つまり……。


　その場に座り込み「うーん、うーん」と唸っている私に副社長が言った。


「どうした？」

「……自分がバカ過ぎて、理解不能です」


　いくら似ていると思ったとはいえ、二人に血縁関係があるとまでは考えてもいなかったから。残念ながら、そこまで深読みできるほどのチカラを持ち合わせていない私は。
　気楽に「なんとなく二人が似ている」などと口にしてしまった自分を叱りたい気分だ。