・LOVER—いつもあなたの腕の中—

「そうやって男の前で隙を見せるな。君は少し無防備すぎる」

「無防備……。そんなこと無いですよ」

「自分で気付いていないだけだ」


　だめだ、言い返せない。少し強引に誘われると、流され易いタイプなのは薄々感じていたけれど。
　確かに西田さんと出逢った時も、深く考えず西田さんについて行ってしまったし。たまたま西田さんが有名人で、いい人だったから良かっただけで。
　気付くと、いつも西田さんのペースにハマってしまっているということは、結構振り回されやすいことを証明しているようなもので、反省すべき点なのかも。


「おっしゃる通りです、以後気をつけます」


　だからといって副社長の行動は、私が訴えたらセクハラですけどね。……と思ってみても本人に直接言える勇気はない。


「そんなに素直に謝られると調子が狂うだろ」と口角を上げて笑った副社長の表情を目にして、むしろ調子が狂ったのは私の方だ。

　今まで姿も見た事が無かった副社長だけれど。ここ数日、何度か顔を合わせる機会に恵まれた私は他の社員達よりも副社長と接した回数も増えて。
　もしかしたら毎回違う雰囲気や態度だと感じることも、何か意味があるのかもと思い始めていた。