・LOVER—いつもあなたの腕の中—

 今回はごめんなさいと謝る私に対し、西田さんは怒ることも無く逆に「頑張ってね」と低めの声で励まされたことで。胸がキュッと締め付けられてしまった。
 自分のおっちょこちょいな性格をこれ程恨めしく思ったことなど今まであっただろうか。そう思ってしまうくらい、西田さんの残念そうな声が耳に残る。

 後ろ髪を引かれている気持ちのまま副社長室へと向かい。腕にコートをかけ報告書を胸元に抱え、ドア前で深呼吸しノックした。
 もう副社長室に入るのは初めてではないのに、何度来ても緊張してしまう。

「真島です」と声をかけると室内から「どうぞ」と返事が聞こえ、静かに副社長室のドアが開けられた。
 一歩足を踏み入ると秘書である高田さんの姿が現れ、にこやかな笑みと共に出迎えられたため一瞬緊張が緩む。


「お疲れ様です。副社長、真島さんが……」

「見ればわかる」

「では、本日は先に失礼いたします」

「高田さん?」


 嘘でしょ? 高田さん帰っちゃうの?


 私の不安を気に留めること無く、高田さんは副社長へ一礼すると部屋から出て行ってしまった。さっきの高田さんへ返している言葉の感じから受けるのは、私を無視した時と同じ。
 あの、感じの悪い態度だった副社長の雰囲気だと思う。