・LOVER—いつもあなたの腕の中—

「そうかな。お互いのことを知るために、手探りしている時間が勿体ないと思わない?」


 小首をかしげている西田リュウが子犬みたいな表情で私を見つめるから。なんだか本当にどうでもよく思えてきてしまう。


「……はぁ。もう何でもいいです、好きに呼んでください。で、何かご用ですか?」

「うん、早速で悪いんだけど。お願い聞いてくれる?」

「内容にもよります」

「うわっ、いつもマネージャーが俺に言うことと同じセリフだ」


 後頭部辺りを掻き「参ったな」と独り言のように呟いた西田リュウは、改めて真面目な表情に変わり。「優羽が持っていた社名入りの手帳が一冊欲しいんだけど」と言った。


「手帳ですか?」


 そんなもの何に使うんだろう、と疑問符が浮かぶ。けれど次の言葉を聞きすぐに納得した。


「これも何かの縁だし少しでも貢献したいからね。私物として愛用していたら各方面からの目にも留まりやすいだろうし。自分でも使い心地とか知っていた方がインタビューに答える時も色々役に立つと思うんだ」

「分かりました。次の打ち合わせでお会いする時までに用意しておきます」


 正直驚いた、そこまで考えてくれていたなんて。