「……違う。あなた、誰?」


 私の唇を這っていたリュウの唇に違和感を感じ、思わずリュウから唇を離し距離を取る。
 目の前にいるリュウは、確かにリュウだ。
カジュアルテイストな洋服にカラーパンツ姿のリュウを、見たことが無かったわけではないけれど。仕事中や次の仕事先への移動中に限ってのこと。
 どちらかといえばプライベートで出歩く際、街中で目立たないように暗めの色合いや地味目なスタイルが多いのに。

 それ以上に感じたのは「私の知っている唇とは違う」ということだ。
 ならば。今、私の前に居るリュウは誰なのか、答えは自ずと導き出せてしまう。


「副……社長?」

「へぇ、さすがじゃん。よく分かったな」


 言い当てた私にアッサリと認めた副社長は、口角を上げ意味深に微笑んだ。


 どういうこと? 副社長がリュウになりすまして私を騙そうとしたの? 私なんかを騙して、いったい何をしようとしたの?


「あ……の」


 大混乱し戸惑いを隠せず、副社長を見つめてしまっていると「同じ顔してるんだし、どっちだっていいじゃん」と口にし迫られてしまい。後ずさりすると副社長の右手が伸びてきて左肩をトンと押され、体勢を崩した私はソファに寝ころばされてしまい逃げ場を失ってしまった。